Q1 甲状腺腫瘍が見つかりました。手術が必要でしょうか?

A1 悪性腫瘍であれば手術が基本になります。良性腫瘍であれば手術の必要はありませんが、甲状腺腫瘍は検査を行っても良性と断定できないタイプの腫瘍がその多くを占めており、様々な条件を考慮して手術が必要かどうかを判断します。

[解説]

甲状腺にしこりが見つかった場合、まずそれが本当に甲状腺腫瘍なのかどうかが問題になることがあります。橋本病やバセドウ病は甲状腺全体が腫れる病気ですが、一部がしこりのように外から触れたり、超音波検査で内部にしこりができているように見える場合があります。腫瘍が合併しているのか、しこりのように見えているが腫れ方が歪になっているだけで甲状腺腫瘍ではないのか判断しなければなりません。実際には判断に迷う場合も多く、疑わしい場合は甲状腺腫瘍の合併としてその後の検査を進めてゆくことになります。

甲状腺腫瘍と判断した場合は、超音波検査と穿刺吸引細胞診を行って、悪性腫瘍で手術が必要なものかどうかを判断します。悪性か良性かの区別にCT検査やMRI検査を行うことはありません。悪性腫瘍のうち最も頻度の高いものは甲状腺乳頭がんで、超音波検査と穿刺吸引細胞診により高い確率で診断することができます。手術による甲状腺の切除が治療の基本となりますが、乳頭がんで1cm以下の場合は条件が良ければ手術せずに経過をみる場合もあります。また、悪性リンパ腫は切除、放射線治療、抗がん剤治療を組み合わせて治療を行います。その他の甲状腺悪性腫瘍は手術による治療が基本です。

良性腫瘍であれば手術の必要はありませんが、甲状腺腫瘍は超音波検査と穿刺吸引細胞診を行っても良性と断定できない、すなわち悪性であることを完全には否定できないタイプの腫瘍がその多くを占めており、それが問題になっています。このようなタイプの甲状腺腫瘍については様々な条件を組み合わせて手術を行うかどうかを判断します。

良性腫瘍でも腫瘍が胸部まで入り込んでいる場合や、頚部の圧迫症状を訴えている場合、美容的に問題のある場合では手術を行うことがあります。また、甲状腺ホルモンを過剰に分泌する中毒性結節性甲状腺腫は、アイソトープ治療を行うか、手術で結節を切除します。

Q2 甲状腺腫瘍が見つかり、穿刺吸引細胞診で悪性ではないと言われました。安心してよいでしょうか?

A2 悪性の判定でない場合であっても、細胞診で鑑別困難(クラス 3)と判定される内の数%は悪性腫瘍であり、安心とは言えません。超音波検査や血液検査、腫瘍の大きさなどを考慮して手術するかどうかを判断します。

[解説]

細胞診の結果で悪性ではないと言われたということは、判定区分の正常あるいは良性(クラス1と2)または、鑑別困難(クラス 3)であったということです。正常あるいは良性の判定であればまずは安心しで大丈夫でしょう。しかし、細胞診の判定は絶対的なものではありませんので、経過観察は必要です。

問題は鑑別困難と判定された場合です。鑑別困難と判定されることの多い病気は、腺腫様甲状腺腫(良性)、濾胞腺腫(良性)、濾胞がん(悪性)の3つです。細胞診が鑑別困難の判定で、超音波検査や血液検査などから悪性の疑いがあるということで手術を受けた方の10 – 20%が実際に悪性であったと報告されています。超音波検査や血液検査などから悪性の疑いの低い方なども含めた全体では、鑑別困難の判定の腫瘍のうち実際に悪性である可能性は4 – 5%くらいであろうと言われています。なお、この頻度は手術を受けなかった方をすべて良性と考えて計算した値ですので、実際にはもう少し高いかもしれません。

悪性の検査結果が出なかった甲状腺腫瘍に対してどのような治療方針で対処すべきか、専門家の委員会で現在議論がなされており、下記に挙げた所見が認められた場合には手術を勧めるという方向で意見がまとまりつつあります。手術を行わない場合は、6か月から1年に1回程度の頻度で超音波検査や血液検査による経過観察が必要です。

【細胞診で鑑別困難と判定された腫瘍に対して手術を考慮すべき所見】
● 超音波検査で悪性腫瘍を疑う所見がある
● 血液検査でサイログロブリンが1,000ng/dl以上
● 腫瘍の大きさが4cm以上

Q3 甲状腺の良性腫瘍と診断され、経過観察を受けています。腫瘍が大きくなってきましたが、どうすればよいでしょうか?

A3 診断時に細胞診で鑑別困難(クラス 3)と判定された腫瘍の場合は、明らかに大きくなっており、再度行った細胞診でも鑑別困難の判定であれば手術をしておいたほうがよいでしょう。

[解説]

良性腫瘍と判断されるしこりのうち、のう胞や腺腫様甲状腺腫などでは、中にたまっている液の量が増えるためにサイズが大きくなることがあり、この場合は問題ありません。また、腺腫様甲状腺腫の診断がまず間違いないような場合は、細胞の部分が大きくなってきても問題ないことが多いでしょう。

Q2で解説したように細胞診で鑑別困難(クラス 3)と判定された腫瘍については、濾胞がんの可能性が否定できませんので、再評価が必要です。大きくなることは悪性であることを示しているわけではありませんが、腫瘍が明らかに大きくなっており、再度行った細胞診でも鑑別困難の判定であれば手術をしておいたほうが無難でしょう。

Q4 良性腫瘍が悪性腫瘍に変わることはあるのでしょうか?

A2 良性から悪性に変わることはまずないと考えられています。

[解説]

良性から悪性に変わることはまずないと考えられています。しかし、Q2で説明したように、診断の時点で良性と断定できない腫瘍が多く、良性の可能性が高いと判断して経過を観察しているうちに、悪性であることがはっきりしてくる場合があります。これは良性から悪性に変わったのではなく、はじめから悪性であったが診断が困難であったということです。

Q5 甲状腺にしこりができて、腺腫様甲状腺腫(せんしゅようこうじょうせんしゅ)と診断されました。どんな病気ですか?

A5 甲状腺にいくつも結節(しこり、こぶ)ができる病気です。

[解説]

できている結節の多くは厳密な意味での腫瘍ではなく、過形成と呼ばれるものです(ただ、実際の診療では腫瘍と過形成の区別はあまり明確なものではありません)。結節ひとつひとつを腺腫様結節、複数個の腺腫様結節をまとめてひとつの病気として腺腫様甲状腺腫と呼んでいますが、厳密に区別しているわけではありません。通常は特に症状は無く、よほど大きくならない限り、声がかすれたり、ものを飲み込みにくくなる原因にはなりません。

良性の病気で基本的には治療をせずに経過を見ることになりますが、次の点に注意が必要です。

  • 複数個ある結節すべてが良性とは限らず、一部ががんである場合があるので、ひとつひとつの結節を超音波検査で注意深く観察します。がんの疑いのある結節は細胞検査でさらに詳しく調べます。
  • 数%の方で甲状腺ホルモンが出過ぎる(甲状腺機能亢進症)ことがあります。この場合は甲状腺機能亢進症の治療のためにアイソトープ治療や手術をおこないます。
  • 逆に甲状腺ホルモンの分泌が少なくなる(甲状腺機能低下症)こともあります。この場合は甲状腺ホルモン剤の内服により甲状腺機能を正常化します。
  • 非常に大きくなって圧迫症状がでることがあります。この場合は手術を検討します。

がんの合併や甲状腺機能に異常がなければ心配ありません。年に1-2回、変化の有無を超音波検査と血液検査で確認します。また、結節を小さくする、あるいは大きくなるのを防ぐために甲状腺ホルモン剤を内服することがあります。

以下に該当するの場合は手術が必要です。

  • がんを合併しているとき
  • 甲状腺ホルモンの分泌が過剰になったとき(最近はアイソトープ治療が主流)
  • 甲状腺腫が大きくなって胸郭の中まで入ってきたときや、気管や食道などの周囲組織への圧迫症状が出たとき
  • 美容的な意味で甲状腺腫が目立つ場合