造影剤を使う検査を受けることになりました。甲状腺の病気を持っていますが、大丈夫でしょうか?

[まとめ]
バセドウ病などの甲状腺機能亢進症では、ヨード造影剤の使用により病状の悪化する可能があり、緊急性が無ければ甲状腺機能が正常な時期に受ける方が安全です。バセドウ病や橋本病では、甲状腺機能が落ち着いている状態であっても、ヨード造影剤の使用後に甲状腺機能が変化する可能性がありますので、経過観察が必要です。

[解説]
造影CT検査、腎盂・尿管造影検査や血管造影検査で使用される造影剤には大量のヨードが含まれています。大量のヨードは、甲状腺機能に影響を与える可能性があり、その使用にあたっては注意が必要です。造影剤の使用上の注意書きには、「重篤な甲状腺疾患のある患者」には使用してはいけないと、記載されています。「重篤な甲状腺疾患のある患者」は、造影剤の適正使用ガイドラインでは、甲状腺機能亢進症を指しています。そのために、ヨード造影剤を使用する際には、ほとんどの医療機関で問診票の記載を求められますが、必ず甲状腺機能亢進症かどうかを尋ねる設問が入っています。

バセドウ病の甲状腺機能亢進症の治療薬としてヨード剤を使用することもあり、解釈が難しい点もありますが、実際に甲状腺ホルモンの高い方に使用して、生命に関わる危険な状態になったという報告があります。したがって、バセドウ病の方では、造影剤を使用する検査が必要な場合、可能であれば甲状腺機能が正常な時期に受けることが勧められます。心筋梗塞など緊急性のある場合は、甲状腺機能の状態よりも心臓の病状の方が優先されますので、甲状腺機能亢進症を強力に治療しながら造影検査も行うということになります。また、甲状腺機能が正常にコントロールされているバセドウ病でも、ヨード造影剤により甲状腺機能が変化する可能性はありますが、甲状腺機能を注意深く観察していれば危険な状態になることはありません。

また、中毒性結節性甲状腺腫(甲状腺機能亢進症を伴う腺腫様甲状腺腫)ではヨードを多量に摂取すると甲状腺機能亢進症が悪化しますので、先に中毒性結節性甲状腺腫の治療を行って、甲状腺機能を正常化してから、造影剤検査を受けるようにしてください。

そのほか、橋本病でも大量のヨードが投与されると甲状腺機能が低下する可能性がありますが、危険な状態に陥る心配はありません。

ヨード造影剤には水溶性と油性の2種類の造影剤があり、先程の造影CT検査、腎盂・尿管造影検査や血管造影検査で使用される造影剤は血管内に注射するための水溶性造影剤で、注射後は速やかに体外に排泄されますので、ヨードの影響は短期間ですみます。
一方、子宮卵管造影検査、気管支造影検査でもヨード造影剤が使用されますが、これらの検査で使用される造影剤は油性造影剤です。こちらは、体内に注入後もなかなか排泄されず長くとどまりますので長期にわたるヨードの影響を考える必要があります。橋本病やバセドウ病で甲状腺機能が正常で落ち着いていても、甲状腺機能に影響が現れる可能性がありますので注意が必要です。特に橋本病の方では、不妊症のために子宮卵管造影検査を行った後、軽度の甲状腺機能低下症になる頻度は高く、この時期に妊娠が成立すると胎児の発育に影響の出る可能性が否定できませんので、子宮卵管造影検査後は注意深く甲状腺機能を観察する必要があります。

MRI検査で使用する造影剤にはヨードは含まれていませんので問題ありません。