Q2 甲状腺ホルモンが高くてバセドウ病と診断されました。間違いないでしょうか?

A2 血液中の甲状腺ホルモンが高いというだけでバセドウ病と診断されてしまうことがあります。甲状腺ホルモンが高くなる病気はバセドウ病だけではありません。バセドウ病の診断の決め手はTSHレセプター抗体の測定です。

[解説]
血液中の甲状腺ホルモンが高いということだけでバセドウ病と診断され、薬が投与されることがあります。しかし、甲状腺ホルモンが高いだけではバセドウ病と言えません。バセドウ病ではないのに、間違って甲状腺ホルモンの合成を抑える薬が投与されると非常に危険な場合があります。
血液中の甲状腺ホルモンが高くなる病気の約80%はバセドウ病です。したがって、甲状腺ホルモンが高いのでバセドウ病です、と言えば80%は診断が当たるということです。でも残りの方はバセドウ病以外の病気ですので誤診ということになります。

甲状腺ホルモンが高くなる病気の中で、バセドウ病以外でよく見られるのは無痛性甲状腺炎と亜急性甲状腺炎です。亜急性甲状腺炎は、熱が出たり、甲状腺に強い痛みを伴うのでバセドウ病との区別は比較的簡単です。しかし、無痛性甲状腺炎は、ホルモンの上昇と全身的な症状からはバセドウ病との違いがほとんどありません。症状から見分ける唯一の点はバセドウ病の眼の症状があるかどうかですが、バセドウ病でも眼にほとんど変化のない方もたくさんいますので、これだけでは区別出来ません。無痛性甲状腺炎とバセドウ病を見分ける決め手はTSHレセプター抗体(→免疫異常を調べる検査)です。バセドウ病はTSHレセプター抗体が甲状腺を刺激するために甲状腺ホルモンが高くなる病気ですので、TSHレセプター抗体が高いということはバセドウ病である最も確かな証拠です。一方の無痛性甲状腺炎では高くなりません。

ただ、残念ながらあらゆる病気には例外というものがあり、バセドウ病でもTSHレセプター抗体が高くならない方、無痛性甲状腺炎でもTSHレセプター抗体が少し上昇する方がいます。このような例外的な場合にはさらに診断を正確にするために、アイソトープ検査を行います。

甲状腺ホルモンが高くなる原因には、このほか妊娠や、ホルモンを過剰に分泌する腫瘍などもありますので、妊娠していないかどうか、甲状腺に腫瘍ができていないかどうかも確認しておく必要があります。また、小児で甲状腺ホルモンが高い値を示している時に甲状腺機能亢進症と誤診されることがあります。小児のFT3、 FT4の正常範囲は成人に比べて、少し高い値のところまで正常に含みますが、検査会社からのレポートには成人の正常範囲しか記載されていませんので、その範囲を超えることがあるのです。この場合、TSHが正常範囲内であれば、異常ではないと判断してよいでしょう。

Q23 小学生の子供なのですが、甲状腺ホルモンが高くてバセドウ病と診断されました。間違いないでしょうか?

A23 バセドウ病を小児期に発病する頻度はバセドウ病全体の5%以下と少ないのですが、小児でもバセドウ病になります。ここで注意が必要なのは、小児の甲状腺ホルモンの正常範囲は成人と異なるという点です。甲状腺に病気がなくても成人の正常範囲を超えて高い値を示すことがあります。TSHが正常であれば、甲状腺機能は正常と考えてよいでしょう。

[解説]
バセドウ病の発病年齢は20歳 – 40歳にピークがありますが、小児もバセドウ病になります。ただ、その頻度は低く小児期の発病はバセドウ病全体の5%以下です。小児のバセドウ病の診断方法は成人と同じです。ここで注意が必要なのは、小児の甲状腺ホルモンの正常範囲は成人と比較して高い値に分布するのですが、医師からもらう検査結果報告書には通常は成人の正常範囲しか記載されていないという点です。この正常範囲をもとに、小児であるという点を考慮せずに甲状腺ホルモンが高いと判断され、バセドウ病と誤診されることがあるので注意が必要です。

甲状腺ホルモンが成人の正常範囲を超える高い値であっても、甲状腺ホルモンの分泌量を調節しているTSHが正常であれば甲状腺機能にはまず異常がないと考えて良いでしょう。甲状腺ホルモンが本当に病気として高い値であれば、TSHは低い値になります。

Q25 甲状腺ホルモン(FT4、FT3)が高い値にもかかわらずTSHが正常でした。バセドウ病なのでしょうか?

A25 甲状腺機能を調べる血液検査 で解説したように甲状腺ホルモンが明らかに高い値の時、TSHは非常に低くなります。これが通常の組み合わせですが、食い違いが生じた時にどのように診断していくのか解説します。

[解説]
甲状腺ホルモンが明らかに高いのにもかかわらず、TSHが下がらないことからこの病態を不適切TSH分泌症候群(SITSH)と呼びます。そして、このSITSHを起こす原因は一つではなく、大きく以下の4通りのものがあります。

[1] FT4、TSH測定方法に影響をおよぼすものが血液中に存在していて、間違った値が出てしまう。これは病気ではなく治療の必要はない。
[2] 炎症による一過性の甲状腺ホルモン高値を起こす病気の初期に、甲状腺ホルモンが高くなっているのに、まだTSHが下がりきっていない事がまれにあり、その時にこのような組み合わせになる。自然に治っていく病気であり経過観察で良い。

まず、これら1と2について確実に確認することが大事です。1については専門医療機関では、血清を特殊処理して影響物質を取り除いて再測定します。また、異なるメーカーの測定キットを使用すると影響が出なくなることもあります。2については、初めて見つかってから、1か月後と3か月後に再検査を行い、一過性の病気なのかどうかを確認します。

1と2が否定されると以下の2つの病気を考えます。

[3] 甲状腺ホルモン不応症。親から子に50%の確率で遺伝する病気。治療不要
[4] TSH産生腫瘍。治療が必要

3と4の診断の手順ですが、まず親、兄弟、子供の甲状腺機能検査を行います。家族内に他にSITSHが見つかれば、3の甲状腺ホルモン不応症の可能性が高く、遺伝子検査を行います。
家族内にSITSHが見つからなければ、下垂体MRI検査を行います。下垂体に大きさが1cm以上の明らかな腫瘍が見つかれば、TSH産生腫瘍として治療を行います。腫瘍がない場合は、家族性のない甲状腺ホルモン不応症を疑い、ホルモン負荷検査と遺伝子検査を行います。1cm以下の小さな腫瘍が疑われる場合は、小さなTSH産生腫瘍の可能性と、家族性のない甲状腺ホルモン不応症にたまたまホルモン異常と関係のない下垂体腫瘍が合併している場合の二通りが考えられ、こちらもホルモン負荷検査と遺伝子診断を行い、慎重に診断します。