Q9 橋本病と診断されました。甲状腺機能は正常なので治療の必要はないと言われましたが、今後どのようにすればよいでしょうか?

A9 甲状腺機能が正常であれば、特に症状は現れず、治療の必要もありません。将来甲状腺機能低下症に進行する可能性がありますので、定期的に甲状腺機能検査を受けてください。甲状腺の腫れが急に大きくなってきた時は甲状腺機能低下症への進行の可能性と、甲状腺悪性リンパ腫発病の可能性があり、検査が必要です。

橋本病による全身的な症状は甲状腺機能低下症によるものですので、甲状腺機能が正常であれば症状はなく、症状に現れないような隠れた影響もまずありません。当然、甲状腺ホルモン剤を内服する必要はありません。甲状腺の腫れが大きい方は違和感を感じたり、外見が気になることもあり、そのような場合は甲状腺ホルモン剤を内服して甲状腺の腫れが小さくなるかどうか試してみることはあります。

甲状腺機能正常の橋本病の方の甲状腺機能が将来どうなってゆくのかですが、5年くらいの長さでみると甲状腺ホルモンが低下する方に加えて、逆に高くなる方もあり、合わせて約30%の方に変化がみられます。多くは一過性の変化で、治療を要する甲状腺機能低下症に進行する方は4~5%です。

さらに長い期間の経過ですが、橋本病の進行過程は一人ひとり異なりますし、実際にどのように進行してゆくのか詳細は明らかになっていません。20歳代で橋本病による甲状腺機能低下症で治療を受けている方もいるわけで、徐々に時間をかけて進行するというよりは、Q5 で説明した橋本病を悪化させる要因の発生する確率と、その要因に対して影響を受けやすいかどうかの遺伝的な体質などに関係しているのかもしれません。このように、甲状腺機能正常の橋本病と診断された方が将来どうなってゆくのか、一人ひとりについて正確に推測することはできません。しかし、そのような方全体で見れば、毎年新たに甲状腺機能低下症に進行する方が現れるのは間違いありませんので、定期的に甲状腺機能検査を受ける必要があります。

どのくらいの間隔で甲状腺機能検査を受ければよいかですが、半年~1年に1回程度の検査を受けましょう。安定した状態が続いているようであれば1~2年に1回の検査でよいでしょう。もちろん甲状腺機能低下症の症状や、その逆の甲状腺ホルモン過剰の症状が現れた場合はその都度検査を受けてください。また、甲状腺の腫れが急に大きくなってきたり、圧迫感が強くなってきたりした時も必ず受診してください。これには2通りあり、ひとつは甲状腺機能低下症が現れた時です。甲状腺機能低下症によりTSHの値が高くなると、甲状腺の腫れが大きくなります。もうひとつはまれですが、甲状腺悪性リンパ腫の発生の可能性があります。甲状腺悪性リンパ腫は橋本病の甲状腺に入り込んだリンパ球から発生してくる腫瘍ですので、橋本病は甲状腺悪性リンパ腫発病のリスクです。発病はかなり年齢が高くなってからで、60~70歳にピークがあります。