Q8 最近薄毛が気になります。甲状腺機能低下症と関係があると聞きましたが本当ですか?

A8 薄毛で悩んでおられる方のうち甲状腺機能低下症によるものは、そのごく一部ですが、薄毛が甲状腺機能低下症によるものであれば、甲状腺ホルモンを補充することによって良くなることは間違いありません。

甲状腺ホルモンには、髪の毛の成長を促す作用がありますので、甲状腺機能低下症で脱毛が見られることは古くから知られています。甲状腺ホルモンの毛髪の成長サイクルに対する作用についてはかなり詳しく研究されていて、甲状腺ホルモンは、髪の毛の成長の開始と成長の期間に対する作用があることが分かっています。そのために、甲状腺ホルモンが不足しますと、髪の毛は、細く、弱くなって抜けていきますし、脱毛したあと髪の毛が再び生えてくるのに要する時間も長くかかります。

しかし、甲状腺機能低下症があれば、誰にでも脱毛が起こるというわけではなくて、脱毛が起こるかどうかは、甲状腺機能低下症の強さ、期間、それから患者さん個人の感受性によります。甲状腺ホルモンが不足していれば、多かれ少なかれ、髪の毛の症状が出る可能性はありますが、甲状腺機能低下症が軽い人では髪の毛の症状を訴えられる方はあまりいらっしゃいません。逆に、重症の甲状腺機能低下症であれば、全ての人に脱毛の症状はあると考えていいでしょう。

薄毛が甲状腺機能低下症によるものかどうかの判断ですが、薄毛が起こってくるほどの甲状腺機能低下症でしたら、甲状腺機能低下症によるほかの症状があります。すなわち、寒さに弱い、顔や手が浮腫む、皮膚がカサカサする、疲れやすい、あまり食べないのに太る、物忘れしやすいなどの症状です。こういう症状があれば、甲状腺機能低下症による可能性が考えられます。しかし、このような症状は、中年以降の女性に聞きますと健康な方でも感じておられることが多いので、症状だけでは判断が難しく、心配であれば調べてみるということになると思います。幸い、甲状腺機能低下症があるかどうかを調べるのは、非常に簡単で、血液検査をうければすぐに分かります。お近くの内科の先生を受診してTSHという血液検査をうけてください。もちろん皮膚科の先生でも大丈夫です。薄毛が、甲状腺機能低下症によるものでああれば、甲状腺ホルモンを補充すれば、完全に良くなります。

NHKの依頼で、甲状腺機能低下症と脱毛の関係について、ためしてガッテンという番組にスタジオ出演してお話しました(平成25年4月3日、放映)。番組では、薄毛で悩んでおられる方の10人に一人は甲状腺機能低下症による可能性があると紹介がありました。薄毛で悩んでいる方の頻度は正確には分かりませんが、甲状腺機能低下症の頻度は、我が国における成人を対象にした疫学調査で、男性0.24-0.40%(250-400人にひとり)、女性0.7-0.85%(117-142人にひとり)と報告されています。最初に述べましたように、甲状腺機能低下症の方の全てに脱毛の症状が出るとは限りませんが、頻度はそれに相当するように思われます。

最後に、薄毛で悩んでおられる方のうち甲状腺機能低下症によるものは、そのごく一部だと思いますが、薄毛が甲状腺機能低下症によるものであれば、甲状腺ホルモンを補充することによって良くなることは間違いありません。しかし、薄毛が甲状腺機能低下症によるものでない場合は、甲状腺ホルモンを補充しても効果はありませんから、そこはお間違いのないようにお願いします。甲状腺機能低下症があるかどうかは、専門医を受診される必要はなく、お近くの内科の先生にご相談されれば簡単に分かります。治療も難しくはありません。なにか問題があった時に専門医にご相談されればと思います。