Q25 甲状腺ホルモン(FT4、FT3)が高い値にもかかわらずTSHが正常でした。バセドウ病なのでしょうか?

A25 甲状腺機能を調べる血液検査 で解説したように甲状腺ホルモンが明らかに高い値の時、TSHは非常に低くなります。これが通常の組み合わせですが、食い違いが生じた時にどのように診断していくのか解説します。

[解説]
甲状腺ホルモンが明らかに高いのにもかかわらず、TSHが下がらないことからこの病態を不適切TSH分泌症候群(SITSH)と呼びます。そして、このSITSHを起こす原因は一つではなく、大きく以下の4通りのものがあります。

[1] FT4、TSH測定方法に影響をおよぼすものが血液中に存在していて、間違った値が出てしまう。これは病気ではなく治療の必要はない。
[2] 炎症による一過性の甲状腺ホルモン高値を起こす病気の初期に、甲状腺ホルモンが高くなっているのに、まだTSHが下がりきっていない事がまれにあり、その時にこのような組み合わせになる。自然に治っていく病気であり経過観察で良い。

まず、これら1と2について確実に確認することが大事です。1については専門医療機関では、血清を特殊処理して影響物質を取り除いて再測定します。また、異なるメーカーの測定キットを使用すると影響が出なくなることもあります。2については、初めて見つかってから、1か月後と3か月後に再検査を行い、一過性の病気なのかどうかを確認します。

1と2が否定されると以下の2つの病気を考えます。

[3] 甲状腺ホルモン不応症。親から子に50%の確率で遺伝する病気。治療不要
[4] TSH産生腫瘍。治療が必要

3と4の診断の手順ですが、まず親、兄弟、子供の甲状腺機能検査を行います。家族内に他にSITSHが見つかれば、3の甲状腺ホルモン不応症の可能性が高く、遺伝子検査を行います。
家族内にSITSHが見つからなければ、下垂体MRI検査を行います。下垂体に大きさが1cm以上の明らかな腫瘍が見つかれば、TSH産生腫瘍として治療を行います。腫瘍がない場合は、家族性のない甲状腺ホルモン不応症を疑い、ホルモン負荷検査と遺伝子検査を行います。1cm以下の小さな腫瘍が疑われる場合は、小さなTSH産生腫瘍の可能性と、家族性のない甲状腺ホルモン不応症にたまたまホルモン異常と関係のない下垂体腫瘍が合併している場合の二通りが考えられ、こちらもホルモン負荷検査と遺伝子診断を行い、慎重に診断します。