Q10 バセドウ病と診断され、抗甲状腺薬治療を受けることになりました。妊娠を望んでいますが、妊娠したときに胎児の発育が悪くなったり、奇形の心配はありませんか?

A10 妊娠中は母体のTSHレセプター抗体の影響が胎児にも及び胎児も甲状腺ホルモンを過剰に分泌するようになるのですが、妊婦が服用している抗甲状腺薬は母体だけでなく胎児の甲状腺機能も抑えますので、胎児が無事に発育するために大事な働きをしています。安心して内服してください。ただ、妊娠初期のメルカゾール内服と、非常にまれな奇形との関係が報告され、妊娠を望んでいる場合はプロパジール、チウラジールの内服が推奨されています。

[解説]
妊娠中に薬を内服することは、胎児に悪影響を及ぼす可能性があるのでできるだけ避けるというのが一般的な考えですが、バセドウ病の場合は特殊で、妊婦が抗甲状腺薬を内服することは胎児にとっても有益なことなのです。甲状腺機能亢進症の原因であるTSHレセプター抗体は妊娠中、胎盤を通過して胎児の血液中にも流れていきます。そして、母体からのTSHレセプター抗体は胎児の甲状腺も刺激するために、胎児も甲状腺機能亢進症になってしまいます。

一方、妊婦が服用している抗甲状腺薬も同じように胎盤を通過して胎児の甲状腺に作用し、胎児の甲状腺機能亢進症を抑えます。つまり、妊婦が服用している抗甲状腺薬は母体だけでなく、胎児にとっても治療になっているのです。そして、母体と胎児の甲状腺ホルモンには強い相関があるため、妊婦のFT4を測定しながら抗甲状腺薬の内服量を調整すれば、胎児もちょうどいい甲状腺機能にコントロールできるのです。

妊婦の甲状腺機能亢進症のコントロールが不十分で甲状腺ホルモンの高い状態が続くと、流産や早産の原因になったり、生まれてきた子どもが小さいなどの悪影響があります。抗甲状腺薬を開始して、3か月以上経過して副作用の心配もなくなり、甲状腺機能も正常化していれば妊娠はいつでも可能です。

次に、奇形の問題です。健康な人の妊娠でも100人に1人くらいは外から見てわかる奇形を持った子どもが生まれるのですが、抗甲状腺薬を内服しながら妊娠してもこのような一般的な奇形の頻度は高くなりませんので安心してください。

ただし、メルカゾールを妊娠初期に内服している妊婦から生まれた子どもに、臍腸管遺残(さいちょうかんいざん)や臍帯(さいたい)ヘルニアなどという、臍(へそ)に関連した異常と、頭の皮膚の一部分が欠損している異常(頭皮欠損)が約2%の頻度で報告されました。その他、日本では少ないのですが、海外を中心に後鼻孔閉鎖や食道閉鎖といった奇形も報告されています。一方、妊娠がわかってすぐにメルカゾールをやめた妊婦やプロパジール、チウラジールを内服していた妊婦ではこれらの奇形はみられませんでした。

以上のことから、妊娠初期はメルカゾールの内服は避けたほうが無難であると考えられ、プロパジール、チウラジールの内服が推奨されています。

【具体的な対処法】
当グループで患者さんにお渡ししている こちらのリーフレット に詳しく記載していますので参照なさって下さい。