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Q4 良性腫瘍が悪性腫瘍に変わることはあるのでしょうか?

A2 良性から悪性に変わることはまずないと考えられています。

[解説]

良性から悪性に変わることはまずないと考えられています。しかし、Q2で説明したように、診断の時点で良性と断定できない腫瘍が多く、良性の可能性が高いと判断して経過を観察しているうちに、悪性であることがはっきりしてくる場合があります。これは良性から悪性に変わったのではなく、はじめから悪性であったが診断が困難であったということです。

Q5 甲状腺にしこりができて、腺腫様甲状腺腫(せんしゅようこうじょうせんしゅ)と診断されました。どんな病気ですか?

A5 甲状腺にいくつも結節(しこり、こぶ)ができる病気です。

[解説]

できている結節の多くは厳密な意味での腫瘍ではなく、過形成と呼ばれるものです(ただ、実際の診療では腫瘍と過形成の区別はあまり明確なものではありません)。結節ひとつひとつを腺腫様結節、複数個の腺腫様結節をまとめてひとつの病気として腺腫様甲状腺腫と呼んでいますが、厳密に区別しているわけではありません。通常は特に症状は無く、よほど大きくならない限り、声がかすれたり、ものを飲み込みにくくなる原因にはなりません。

良性の病気で基本的には治療をせずに経過を見ることになりますが、次の点に注意が必要です。

  • 複数個ある結節すべてが良性とは限らず、一部ががんである場合があるので、ひとつひとつの結節を超音波検査で注意深く観察します。がんの疑いのある結節は細胞検査でさらに詳しく調べます。
  • 数%の方で甲状腺ホルモンが出過ぎる(甲状腺機能亢進症)ことがあります。この場合は甲状腺機能亢進症の治療のためにアイソトープ治療や手術をおこないます。
  • 逆に甲状腺ホルモンの分泌が少なくなる(甲状腺機能低下症)こともあります。この場合は甲状腺ホルモン剤の内服により甲状腺機能を正常化します。
  • 非常に大きくなって圧迫症状がでることがあります。この場合は手術を検討します。

がんの合併や甲状腺機能に異常がなければ心配ありません。年に1-2回、変化の有無を超音波検査と血液検査で確認します。また、結節を小さくする、あるいは大きくなるのを防ぐために甲状腺ホルモン剤を内服することがあります。

以下に該当するの場合は手術が必要です。

  • がんを合併しているとき
  • 甲状腺ホルモンの分泌が過剰になったとき(最近はアイソトープ治療が主流)
  • 甲状腺腫が大きくなって胸郭の中まで入ってきたときや、気管や食道などの周囲組織への圧迫症状が出たとき
  • 美容的な意味で甲状腺腫が目立つ場合

甲状腺の場所、働き

甲状腺の場所

甲状腺は 喉仏(甲状軟骨)の少し下に蝶が羽を広げたような形で、気管を抱きこむように存在しています。重さは10から20gの柔らかい臓器で、病気のために腫れたり、硬くならない限り外から指で探しても触れることはできません。

甲状腺の働きは、甲状腺ホルモンを作り、血液中に分泌することです。甲状腺ホルモンは血液によって運ばれて全身の臓器・細胞に作用します。成長や発達を促し、全身の新陳代謝を調節して、生きていくために必要なエネルギーを作り出しています。

甲状腺機能を調べる血液検査

甲状腺機能はFT3、FT4、TSHの3つの検査で判定します。


[FT3、FT4: 甲状腺ホルモン]

甲状腺ホルモンには2種類あり、基本となる骨組みにヨードが3個結合したものをT3, 4個結合したものをT4と呼びます。甲状腺ホルモンは分泌されると、そのほとんどはタンパク質と結合して血液中を流れています。また、極微量ですがタンパク質と結合していない遊離型(Free)のホルモンも流れています。そして、最終的に臓器に作用するのは遊離型のホルモンです。遊離型ホルモンであるFT3やFT4を測定することで、甲状腺ホルモンの過不足を正確に知ることができます。

FT3とFT4の測定上の意味の違いですが、甲状腺から分泌されるホルモンのほとんどはT4です。T3の多くは甲状腺から分泌されたT4が肝臓などの臓器でT3に作りかえられたものです。そして、T4はホルモンとしての力は弱く、ホルモンとして細胞の働きを変える作用を持っているのはT3です。以上から、甲状腺という臓器のホルモンを作る能力を調べるにはFT4、甲状腺ホルモンの全身への作用の程度を調べるにはFT3ということになります。


[TSH: 甲状腺刺激ホルモン]

TSHは脳下垂体という場所から分泌されるホルモンの一つで、甲状腺を刺激する作用を持っています。脳下垂体は甲状腺ホルモンの量を絶えず監視していて、甲状腺ホルモンが足らないと判断するとTSHの分泌量を増やして甲状腺を刺激します。一方、甲状腺ホルモンが多いと判断すると、TSHを出さないようにして甲状腺への刺激をストップします。したがって、TSHを測定することで甲状腺ホルモンの過不足を知ることができます。

そして、僅かの甲状腺ホルモンの過不足でもTSHは敏感に反応して正常範囲を超えて高くなったり、低くなったりします。一方、FT3、FT4はこのような僅かの変化の場合は、正常範囲から大きく外れることはないため、異常値として捉えにくく、見過ごすことがあります。


[まとめ]

以上から、甲状腺ホルモンの過不足を判定するのはTSHであり、FT3とFT4は過不足の重症度を評価するために測定します。
検査結果の組み合わせとその評価を表にしました。この表に当てはまらない場合は、甲状腺以外の様々な要素を加味して判断することになります。

FT3、FT4 TSH 甲状腺ホルモン過不足の評価 甲状腺機能の表し方
低い 高い 甲状腺ホルモンは不足 甲状腺機能低下症
正常 高い 甲状腺ホルモンはわずかに不足 潜在性甲状腺機能低下症
正常 正常 甲状腺ホルモンは適量 甲状腺機能正常
正常 低い 甲状腺ホルモンはわずかに過剰 潜在性甲状腺機能亢進症
(潜在性甲状腺中毒症)
高い 低い 甲状腺ホルモンは過剰 甲状腺機能亢進症
(甲状腺中毒症)

[基準値] (正常範囲; 測定のためのキットにより異なります)
FT3 1.9 – 3.8 pg/mL
FT4 0.8 – 1.8 ng/dL
TSH 0.4 – 4.5 μU/mL


[妊娠中は異なる基準値に注意]

妊娠中は非妊娠時と異なる基準値が適応されます。さらにその基準値は妊娠の時期により変わっていきます。妊娠中の基準値は下記の通りです。
初期: 下限値は0.1程度(さらに低くなることもあります)、上限値は2.5~3.0以下
中期: 下限値は0.1~0.2程度、上限値は3.0~3.5以下
後期: 下限値は0.1~0.3程度、上限値は3.0~3.5以下

免疫異常を調べる血液検査

甲状腺にはバセドウ病や橋本病などの免疫異常で起こる病気があります。この免疫異常を自己免疫と呼びますが、自己免疫が起きると自己抗体と呼ばれる異常な抗体が作られるので、血液中のこれらの抗体の測定は病気の診断に用いることができます。


[TgAb(抗サイログロブリン抗体)]
[TPOAb(抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体)]

いずれも主に橋本病の診断のために測定されます。サイログロブリンは甲状腺ホルモンが作られる土台になるタンパク質で、甲状腺ペルオキシダーゼはヨードを甲状腺ホルモンの骨格に結合させる酵素タンパク質です。自己免疫によってこれらの甲状腺特有のタンパク質に自己抗体が作られます。橋本病ではTgAbは90%くらい、TPOAbは70%くらいの方で陽性になります。ただし、バセドウ病でも多くの方で陽性になります。

これらの抗体自体は体に害を及ぼすものではありませんので、抗体の値が高いことについて心配する必要はありません。サイロイドテストはTgAbと同じサイログロブリンに対する抗体を測定する検査ですが、病気の検出にはTgAbの方が鋭敏です。同じようにマイクロゾームテストは甲状腺ペルオキシダーゼに対する抗体を測定する検査ですが、TPOAbの方が鋭敏です。


[TRAb(TSHレセプター抗体)]
[TSAb(TSH刺激性レセプター抗体)]

バセドウ病の診断、治療経過の評価のために測定されます。TSHレセプターは脳下垂体から分泌されたTSHが甲状腺を刺激する時に結合するタンパク質で、細胞の表面にあります。TRAbとTSAbは測定方法が異なるために名称が異なっていますが、いずれもTSHレセプターに対する抗体です。

治療前のバセドウ病ではいずれの抗体も95%以上の方で陽性になります。バセドウ病はTRAb、TSAbが甲状腺を刺激するために甲状腺のホルモン分泌が過剰になる病気であり、バセドウ病で起きてくる様々な異常の原因そのものと言えます。したがって、TRAb、TSAbが陽性であるということはバセドウ病である最大の証拠になります。

治療によってバセドウ病が鎮まってくると、免疫異常も軽くなり、TRAb、TSAbも低下してきますので、治療経過の評価のためにも測定されます。免疫異常がおさまっているかどうかの指標になりますので、バセドウ病の薬をやめても大丈夫かどうかの判断や、薬をやめた後の再発の予想などにも参考にします。

TRAbとTSAbの使い分けですが、TRAbの方が鋭敏ですので、主にこちらを測定します。バセドウ病では眼の異常をきたすことがありますが、この眼の異常の活動性に関してはTRAbよりもTSAbの方がより強く関連していますので、このような場合の評価にはTSAbが用いられます。